2020年春に公開された映画『一度死んでみた』は、広瀬すずと堤真一という実力派俳優が初共演し、奇抜な設定と爆笑必至の展開で観る者を魅了したハートフルコメディ。
毒舌女子大生と仮死状態の父親が紡ぐ物語は、笑いだけでなく家族の絆の大切さを改めて感じさせてくれる作品だ。

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作品概要
『一度死んでみた』は2020年3月20日に全国公開された日本のコメディ映画。
監督はCMで人気の浜崎慎治氏、脚本は澤本嘉光氏が担当し、劇場公開後大きな話題を呼んだ作品だ。
公開日:2020年3月20日(金)
監督:浜崎慎治
脚本:澤本嘉光
配給:松竹
出演者(キャスト)
広瀬すず(野畑七瀬) – 毒舌の女子大生で主人公
堤真一(野畑計) – 七瀬の父で製薬会社社長
吉沢亮(松岡卓) – 存在感の薄い社員
リリー・フランキー(火野) – 天国の案内人
松田翔太(藤井) – 研究員
木村多江(野畑百合子) – 計の妻
佐藤健(クラブのボーイ)
池田エライザ(キャバクラ嬢・あかね)
ほか、西野七瀬、志尊淳、でんでん、柄本時生、竹中直人、妻夫木聡、古田新太、城田優、原日出子 ほか多数出演
ストーリーネタバレ解説
■ 父が大嫌いな娘
大学3年生の野畑七瀬は、製薬会社・野畑製薬を経営する父・計に強い反発心を抱いている。
研究一筋で、家族をないがしろにしてきたと思っているからだ。
とりわけ許せないのは、母の死に目に立ち会わなかったこと。
新薬開発を優先した父を、七瀬は心から憎んでいた。
「象のフンの臭いがする!」
そう言って消臭スプレーを吹きかけ、LINEでは「死ね死ね」スタンプを送りつける。
ライブでは「一度死ね〜!」と絶叫する。
七瀬は売れないヘビーメタルバンド「魂ズ」のボーカル。
解散の危機に瀕しながらも、ライブハウスのミサで父への怒りを込めた曲『一度死んでみた』を熱唱する日々だ。
だが皮肉なことに、七瀬は父の希望通り薬学部に進学している。
「研究者になって会社を継いでほしい」という父の期待に応えてしまった自分。
反抗しながらも、どこかで父を無視できない、その複雑な心情がにじむ。
■ 本当に家族をないがしろにしていたのか?
七瀬は父を「クソ親父」と罵るが、思い返せば、公園、花火大会、ドライブ旅行。
父は幼い七瀬をさまざまな場所へ連れ出していた。
花火を見て「炎色反応だ」と理屈で語る不器用な父。
車内で「水兵リーベ僕の船」と元素記号を暗唱する親子。
決して家族を放置していたわけではない。
ただ、愛情表現が極端に理系だっただけなのだ。
そんな娘を心配し、計は部下の松岡を七瀬のお守り役につけていた。
存在感が薄すぎて自動ドアが反応しないことから、あだ名は「ゴースト」
■ 本当に死んだ父
12月23日。
七瀬がライブで「一度死ね〜!」と歌っていたその最中、父の訃報が届く。
あまりにタイミングの悪い現実に、七瀬は言葉を失う。
■ 父の死の真相
野畑製薬は、完成間近の若返り薬『ロミオ』を巡って、ライバル企業ワトスン製薬社長・田辺から合併という名の乗っ取りを仕掛けられていた。
計は内通者をあぶり出すため、部下・渡部の提案に乗る。
それは「2日だけ死ねる」新薬『ジュリエット』を飲み、死を偽装すること。
社長が死ねば、裏切り者が動き出すはず。
だがこれは罠だった。
内通者は渡部本人。
田辺が送り込んだスパイだったのだ。
計を仮死状態にすると、渡部はすぐさま役員会を開き、事前に書かせておいた遺書を公開。
1通目の内容は「社長の座を娘・七瀬に譲る」
実権のない七瀬を据え、合併を強行するつもりだった。
しかし役員たちは、元社長の怨念を恐れ拒否。
焦った渡部は田辺に報告する。
返ってきた命令は冷酷だった。
「蘇る前に火葬しろ」
ジュリエット服用は12月23日14:03。
つまり、復活は25日14:03。
それまでに焼いてしまえば、完全犯罪だ。
渡部は告別式を行わず、25日11時に火葬すると発表。
■ 妨害合戦
渡部の裏切りに気づいたゴーストは七瀬に真実を打ち明ける。
最初は父を救う気になれなかった七瀬。
だが、ゴーストの言葉で気づく。
私は父が嫌いなんじゃない、本当は、大好きだった。
ここから攻防戦が始まる。
七瀬は新社長の権限で役員会を招集し、泣き落としで告別式を主張。
時間稼ぎを図る。
対抗して田辺は近隣の葬儀場をすべて予約。
七瀬は、郷ひろみのディナーショーが中止になった催事場を発見し、告別式の会場として強引に確保。
すると今度は棺桶を買い占められる。
だが魂ズがライブ用の棺を持っていた。
しかし田辺は告別式を13時から11時へ前倒し。
時間工作では田辺が優勢となる。
■ 12月25日
時間稼ぎに失敗した七瀬とゴーストは、復活を早める方法を探す。
霊魂となった父がジェスチャーで「研究ノート」を示す。
自宅でノートを発見。
そこには「復活を早めるには電流を流すこと」と記されていた。
さらに七瀬は知る。
計が母の死に目に来なかったのは、最後まで母を救う薬を研究していたからだった。
■ 運命の告別式
告別式会場では、宇宙に行くことが夢だった計と親交が深かった宇宙飛行士・野口聡一も参列。
田辺はここで合併発表会見を開こうとする。
ゴーストは電流を流して早く復活させるために、帯電した人間同士の接触によるキスAEDを試みるも電流が弱いのか不発。
棺は奪われ火葬場へ、そして火葬炉に棺が入れられる。
七瀬は絶望する。
そのとき。
火葬炉から宇宙服姿の計が現れる。
棺に入っていた本物の宇宙服のおかげで無事だったのだ。
■ 大逆転
2通目の遺言。
「問題が起こったとき、その場で最も年長者の指示を聞け」
田辺(60歳)が合併を決定しようとするが、研究員・藤井が言う。
「わし80歳だから、合併なし」
実は若返り薬ロミオはすでに完成しており、藤井は治験で若返っていた。
田辺と渡部の野望は崩壊。
七瀬と父はお互い言葉足らずだったことを認め合う。
そして七瀬は、野畑製薬に入社し、父の跡を継ぐことを決意する。
この作品が伝えたかったこと
『一度死んでみた』は「家族の絆」や「理解と許し」のテーマをユーモラスに描いた作品。
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家族のすれ違いと再生:反抗的な娘と理解のない父という典型的な関係を、極端な状況を通して描き、「本当に大切なのは言葉ではなく行動や気持ちだ」と示している。
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笑いと涙のバランス:コメディ要素満載ながら、観客の感情を動かすシーンもあり、単なる笑いだけで終わらない深みを持っている。
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人間関係のリセット:死んで生き返るという設定を通じて、もう一度向き合う時間の大切さを象徴的に表現している。
まとめ
一度死んでみたは、「2日間だけ死ぬ薬」という突飛な設定を軸にしながら、実はとても王道な親子の物語を描いたコメディ作品だ。
デスメタルを叫ぶ反抗的な娘と、不器用で仕事一筋な父。
ありがちな関係性に見えるが、「本当に死んでしまうかもしれない」という極限状態に置くことで、ふたりの本音と愛情があぶり出されていく。
全編に散りばめられた豪華キャストのカメオ出演やテンポの良いギャグは、エンタメ性をしっかり担保。
一方で、ラストに向けてじわりと胸に響く展開が用意されており、笑っていたはずなのに最後には心が温かくなる構成になっている。
この映画が伝えているのは「本当に大切な人とは、失ってからでは遅い」というシンプルで強いメッセージ。
素直になれない人ほど刺さる一本。
笑えて、ちょっと泣けて、家族に連絡したくなる、そんな不思議な余韻を残す作品だ。