「その場所を、見つけてはいけない。」
SNS発の話題作がついに映画化された『近畿地方のある場所について』。
未解決事件、都市伝説、心霊現象……
バラバラに見える恐怖が、ひとつの場所へと収束していく構造は、観る者の背筋を確実に凍らせる。
本記事では、本作の作品概要・キャスト情報から、物語の全貌がわかるネタバレあらすじまで徹底解説。
観た後にゾッとする本当の恐怖を、余すことなく紐解いていく。

※本ページはネタバレを含みます。
※本ページはプロモーションが含まれています。
作品概要
タイトル:『近畿地方のある場所について』
公開日:2025年8月8日
上映時間:103分
ジャンル:ホラー/サスペンス
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:白石晃士
原作:背筋
脚本:大石哲也、白石晃士
原作は「このホラーがすごい!2024年版」1位の話題作。
ドキュメンタリー風の演出(モキュメンタリー)が特徴の“場所ミステリー”となっている。
出演者 主なキャスト
| 役名 | 演者 |
|---|---|
| 瀬野千紘 | 菅野美穂 |
| 小沢悠生 | 赤楚衛二 |
| 佐山武史 | 夙川アトム |
| 佐山理恵 | ヤンジョンエ |
| 永野遥 | 佐藤京 |
| 目黒裕司 | のせりん |
| 種村栄作 | 木村圭作 |
| 塚田正純 | ドン・クサイ |
| 諸田美弥 | 菅野莉央 |
| 大森日出子 | 福井裕子 |
| 佐々山千恵 | 久保山智夏 |
ほか
オカルトライター・千紘×雑誌編集者・小沢というコンビが物語の軸。
全編あらすじネタバレ解説
SNSで拡散されている動画に映っているのはオカルトライター・瀬野千紘の姿だった。
彼女は切迫した様子で訴える。
「私の友人が消息を絶ちました。情報をお持ちの方は連絡下さい。彼の名前は…」
時は、事がおこる前に戻る。
文詠社のオカルト雑誌『不思議マガジン』編集部。
編集部員の永野遥が、編集長・佐山武史に問いかける。
「ずっと地下で原稿を書いているの?」
佐山はどこか興奮した様子で答える。
「気合が入っている。楽しみにして」
その言葉の裏には、常軌を逸した何かが潜んでいた。
地下の資料倉庫。
佐山は一人、地図を見つめていた。
そのとき、蛍光灯が点滅し、暗闇の中を走り回る足音が響く。
振り返るとそこには男の亡霊のような存在が立っていた。
亡霊は手を伸ばし、佐山に触れようとする。
次の瞬間、佐山の左目から血が溢れ出し、その血が地図の上へと滴り落ちた。
数日後。
ライターの瀬野千紘は、編集部員・小沢悠生に呼び出され、文詠社を訪れる。
小沢は千紘に、佐山が失踪したため、特集記事を書くのを手伝ってほしいと依頼。
しかし、原稿データは佐山が持ったままであり、共有もなかったため、なんの記事かわからないという。
追い詰められた状況の中、2人は地下資料倉庫へと向かう。
そこには、佐山が集めた膨大で無秩序な資料が山積みになっていた。
最初に2人が確認したのは古いビデオテープだった。
ワイドショーの映像が流れる。
・1984年2月8日、慶子ちゃん失踪事件。
・近畿地方に住む当時7歳の慶子ちゃんが帰宅途中に姿を消し。
・3カ月後、慶子ちゃんの叔父がダムに身を投げて自殺。
・1年後の1985年1月、目撃情報によると、ダムから山に続く道路の脇に少女が森を向いて立っていた。声をかけると、振り返った少女は慶子ちゃんに似ていたが、両目が穴のように開いていて真っ黒だった。その少女は森の中に姿を消した。
次に映し出されたのは、
・2002年の中学生林間学校
・山間の宿舎の外、林の奥から声が響く。
・「おーい」「お山に来ませんか」「カキもあります」
・最初はふざけてはしゃいでいる生徒たち。
・しかし、女子生徒が次々と倒れて騒然となる。
・木の陰からは白い手が現れる。
・男子生徒は証言する。「あれは人だった」「全身3mほどあった」
さらに資料は続く。
・2013年、バイク配信者・種村栄作の映像。
・彼はダム付近で鳥居のある祠を見つける。
・祠の中には大量の人形。
・映像が乱れ、地面に落ちたカメラが彼を映す。
・種村は異様な様子で空を見上げ、左手を掲げる。
・雑音の中で、あの声が聞こえる「おーい」
続いて、配信者ヒトバシラの映像。
・首吊り屋敷に侵入する。
・室内には無数の首吊り縄。
・床には穴が空き、下が見えている。
・2階の子供部屋には、壁一面に貼られた奇妙な紙。鳥居と人、四隅に「了」と書かれた図形。
・引き出しの写真の目が動き、背後には首を吊った白い服の女性が映る。
・その直後、映像は途切れる。
・ヒトバシラはその後、意味不明な投稿をSNSに連発したあとアカウントを消して失踪した。
調査はさらに進む。
見たら死ぬ動画の存在。
団地、赤い服の女、歪な映像の断片。
その動画を見た友人は「女の子の声が聞こえる」と言い、やがて失踪。
彼の部屋のドアには、あの「鳥居と人と了の紙」が貼られていた。
やがて2人は気づく。
すべての事件に共通するもの、それは「声」と「場所」、そして奇妙な図像だった。
さらに、団地での不可解な出来事。
子どもたちの遊び「ましらさま」。
「おーい」「カキあるよ」
捕まれば「お渡しします、ましらさま」と差し出される。
その遊びは、ある伝承に繋がっていた。
最後に見た映像、アニメ『近畿の怖い話』。
そこに語られていたのは、まさるという男の物語だった。
母を亡くした彼は、山で神に出会う。
「わしは神じゃ。お前の願いを叶えよう」
まさるは願う。
「また、おっかあに甘えたい」
神は言う。
「嫁を娶っておっかあの代わりにすればいい。この柿を食べさせれば、女はお前の言いなりだ」
その後、まさるは山で叫び続ける。
「おいで、柿もあるよ」
だが誰も来ない。
やがて彼は死に、祠として祀られた。
そして今でもたまに
「おーい、柿もあるよ」
という声が聞こえる。
すべてが繋がる。
ダム、団地、祠、遊び、動画。
それらはすべて「近畿地方のある場所」へと収束していた。
やがて小沢も異変に飲み込まれ失踪。
それに気づいた瀬野は、単身、弁天手芸店へと向かう。
建物の裏に回ると、2階の窓にあの鳥居の絵が貼られているのが見えた。
そのとき道路の向こうから小沢が現れる。
しかし様子がおかしい。
夢遊病者のようにふらふらと歩き、その背後には影が付きまとっている。
その影は、両手を不自然に上へと伸ばしていた。
瀬野は駆け寄り、小沢の頬を強く叩く。
はっと我に返る小沢。
瀬野は小沢の手を掴み、そのままその場を離れ、瀬野の自宅へ連れていく。
「一人で勝手に動くなと言ったよね」
小沢は申し訳なさそうに謝罪する。
そのとき、小沢の目に一枚の写真が入る。
瀬野が赤ん坊を抱いている写真だった。
「たくみ。私の子供。もういないけど」
重い沈黙の中、小沢は拾った佐山の地図を差し出す。
瀬野はそれを見て言う。
「佐山の夜逃げを手伝ったライターから、居場所を聞いた」
2人は瀬野の車で出発する。
向かう先は富士山の麓。
佐山の潜伏先だ。
その頃、編集部では異変が起きていた。
永野が地下倉庫を掃除すると、飼われていた金魚がすべて死んでいた。
やがて2人は、佐山の家に到着する。
小沢はその様子を動画に記録し始める。
呼び鈴を鳴らしても応答はない。
しかし鍵は開いていた。
中に入ると、異様な光景が広がっていた。
無数の籠や檻。
そして、死んだ鳥やペットの腐敗臭。
そこへ、眼帯をした佐山が現れる。
瀬野が問いかける。
「何でいなくなったの?」
佐山は不快そうに吐き捨てる。
「あー気持ち悪い」
その背後から、四つ足で歩く女が現れる。
「うちの奥さんに何してくれるの」
妻はそのまま2階へと上がっていく。
小沢は必死に言う。
「佐山さん、資料を基に特集を組みたい」
しかし佐山は拒絶する。
「そんな約束していない。次は小沢をたぶらかして、気持ち悪い女だ」
次の瞬間、佐山は言う。
「見つけて下さってありがとうございます」
そう言って眼帯を外すと、左目は穴になっていた。
その直後、2階から妻が落下し、柵に突き刺さって絶命。
さらに佐山は、丸めた紙を小沢のポケットに押し込むと、外へ飛び出し、自らの頭を柵に突き刺して死ぬ。
瀬野は小沢の手を引き、車で逃げる。
車内で紙を開くと、中にはUSBメモリが入っていた。
そこには「2005年、あまのいわやと」と書かれている。
再生すると、ある宗教の映像が流れる。
映像の中、大きな木とトゲトゲした岩の前で祈る信者たち。
その中に・・・瀬野の姿が。
驚愕する小沢に、瀬野は言い訳するかのように語る。
「息子が亡くなった直後で、あの宗教にちょっとだけ入っていた。あの子、殺された。ベビーカーに乗せて公園に行った時、うたた寝しちゃって、起きたらベビーカーが消えていた。近くの池で見つかって…」
さらに続ける。
「信者の話では、石は急に施設に出現した。10年前、解散した時、石が消えて無くなった」
そして核心に触れる。
「あまのいわやとと、まさるは石繋がり。佐山は小沢に託した」
2人は決意する。
「石を壊す」
2人は、大森日出子のもとを訪れる。
彼女は「まさる」の伝説の語り部だった。
「まさるの伝説は隣のお婆ちゃんに聞いた」
さらに、団地の遊びについて語る。
「ましろさまは、まさるが元になった遊び。団地の中庭の木で小学生が首を吊って、母親が飛びつこうと何度もジャンプした。母もおかしくなって、絵を貼って回った」
その絵とは、鳥居と人、四隅に「了」と書かれたものだった。
「亡くなった子供の名前は、了と書いてアキラと読む」
大森は2人を、山が見える部屋へ案内する。
そこは団地5号棟の5階だった。
「まさるの祠はあの山に残っている。石が消えたが、10年前に石が人形を押しのけて戻ったと言う話だ」
2人は車で山へ向かう。
ダムの脇の道を進み、トンネルに入る。
そこには赤い服の女の霊が立っていた。
車をバックさせるが、首が後ろに折れた少年の霊が。
霊に挟まれ逃げ場を失った2人。
瀬野はアクセルを踏み込み、赤い女を撥ね飛ばす。
バックミラーで確認すると、赤い女と少年が、まだ立っていた。
瀬野は言う。
「あの石は必要とされる所に移動する」
小沢は理解する。
「首吊り屋敷の畳の穴は石が開けた」
やがて2人は鳥居へと辿り着く。
祠の中の人形をどけるが、石はない。
瀬野は苛立ち、「石はどこ?」と叫びながらバールで祠を破壊する。
すると唸り声が響く。
その先にあったのは池の中に立つ巨大な木。
しかし様子がおかしい。
瀬野は静かに言う。
「小沢君、ありがとう。私の所に来てくれて」
振り返ると、彼女の背後にはトゲトゲした巨大な石があった。
「私も必要だった」
全てを悟った小沢が問う。
「僕は生贄?」
瀬野は微笑む。
「一番の友人だよ」
その瞬間、池の木の陰から巨大な白い人影が現れる。
無数の目玉が小沢を包み込み、そのまま石の中へ引きずり込む。
赤ん坊の泣き声。
瀬野は石を抱きしめ、涙を流す。
「たくみ・・・」
そして再び、スマホの映像。
瀬野が語る。
「私の友人が消息を絶ちました。彼の名前は小沢悠生。情報をお持ちの方は連絡下さい」
赤ん坊が泣いている声がし、瀬野は赤ん坊をくるんでいる布をだっこする。
「おーい」という声が響く。
瀬野は不気味な顔で微笑み、言う。
「見て下さってありがとうございます」
赤ん坊をくるんでいる布から無数の触手が伸びる。
物語は、そこで終わる。
まとめ
『近畿地方のある場所について』は、未解決事件、都市伝説、心霊現象、ネット文化、それぞれが断片的に提示される。
やがてひとつの場所へと収束していく構造そのものが、この作品の本質的な恐怖である。
物語の前半では、観客は調査する側に立たされる。
バラバラの資料を読み解き、点と点を繋ぎ、真相へ近づいていく感覚。
しかし後半に進むにつれて、その立場は静かに反転する。
気づけば観客自身もまた、何かに導かれている存在へと変わっていくのだ。
作中で繰り返される「おーい」「カキもあるよ」という声。
それは単なる怪異の演出ではなく、人を誘い、引き寄せ、そして取り込む“呼びかけ”である。
そしてその正体は「失ったものを取り戻したい」という、人間の根源的な欲望に寄り添う形で現れる。
瀬野が象徴しているのは、まさにその欲望だ。
息子を失った彼女は、取り戻せる可能性にすがり、禁忌へと足を踏み入れた。
そして最終的に彼女は、小沢という生贄を差し出すことで、自らの願いを叶えてしまう。
ここに、この作品の最も恐ろしいポイントがある。
それは――
怪異は人を襲うのではなく、人の願いによって成立しているという事実だ。
つまりこの物語において、被害者と加害者の境界は極めて曖昧である。
瀬野は悲劇の母でありながら、同時に他者を差し出す存在でもある。
また、石という存在も象徴的だ。
それは固定された呪いではなく、「必要とされる場所へ移動する」存在。
つまり怪異は特定の場所に縛られているのではなく、人の想いや執着によって呼び寄せられるものなのだ。
ラストシーンで瀬野は、再び「情報提供」を呼びかける。
しかしそれは救いを求める行為ではない。
むしろ、新たな犠牲者を引き寄せるための装置へと変わっている。
観客はそこで気づく。
自分が見ていたこの映画そのものが、呼びかけの一部だったのではないか、と。
『近畿地方のある場所について』が残す恐怖は、映像の中には留まらない。
観終わったあとも、日常のどこかに潜み続ける。
ふとした瞬間に思い出してしまうだろう。
あの場所は、本当に近畿地方だけに存在するのか?
そしてもし、どこかであの声を聞いてしまったなら。
「おーい」
そのとき、あなたはもう、引き返せない。